TSSの法的位置づけ

KANHAMの『JARLそこまで言って委員会』で話題にあがりましたんで,ちょっと早い夏休みの自由研究 として調べました: TSSの法的な位置づけです.

まず最初に,電波法まで遡って「TSSによる保証の位置づけ」をまとめますと,下図のようになりました(クリックで拡大します):

  ここでは「第15条の5」を「15-5条」のように表記しています.
  なお「第15条の5」と「第15条第5項」とは意味が異なります.
  前者は「第15条」と同格の条文で,「第15条」と「第16条」との間に追加されたものです.
  インターチェンジの番号と同じ だと思ってください (例: 中央道の「長坂」は「17-1」).
  もっとも条文の番号では「第○条の1」は用いず,「第○条の2」から始まります.


さて,以下で順に「縦」にたどります.

●左側
免許の申請の審査について規定しています.

「200W以下のアマチュア局で,“保証”を受けた無線設備を使用するのであれば,手続きを簡略にできるよ」

と定めています.
このストラクチャ自体は従前から変わっておらず,以下の変遷を経て今の形に落ち着いています:

【2013/11/13 一部訂正】
S37(1962).11.12S34(1959).12.22 10W以下で JARLが 保証したもの
・S58(1983).7.8 100W以下で JARLが 保証したもの
・H4(1992).4.1 100W以下で JARDが 保証したもの
・H8(1996).4.13.12 200W以下で JARDが 保証したもの
・H13(2001).4.1 200W以下で TSSが 保証したもの

●中央
工事設計の変更について規定しています.

「ほんとうは事前の許可がいるんだけど,
・200W以下の送信機の取替・増設 か,
・200W以下の送信機の部品の工事設計
で,“保証”を受けたんだったら,不要だよ」

と定めています.

●右側
変更検査について規定しています.

「ほんとうは変更検査がいるんだけど,200W以下の「設置場所」の変更で,“保証”を受けたんだったら,不要だよ」

と定めています.


で,“保証”とは?


ここまで“保証”としてきた部分は,法令の原文では以下のように述べられています(「」印は筆者によります):
株式会社又は有限会社

アマチュア無線用機器の製造業者及び販売業者、又は
 これらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるもの
 を除き、

 総務大臣が別に定めて公示するところによるものに限る。)

により、

総務大臣が別に定める手続に従つて、

法第三章の技術基準に適合していることの保証
...かいつまむと,「公示された株式会社または有限会社」が保証――となっています.


アマチュア局の保証実施者


その「公示された株式会社または有限会社」,原文ですと前述のとおり
株式会社又は有限会社(アマチュア無線用機器の製造業者及び販売業者、又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるものを除き、総務大臣が別に定めて公示するところによるものに限る。)
のことを,総務省では掲題のように呼んでいます.

その選定のプロセスとしては――

(1) 総務大臣が「アマチュア局の保証実施者」の『要領』を定め,
(2) TSSがそれに応募して『受け付け』られた

――形になっています.
これら(2)ならずも(1)とも官報で「公示」されていますので,「総務大臣が別に定めて公示する」の条件を満たしています.
以下しばらく,それら「公示」の原文です(双方とも該当日の官報本紙から).
長文になりますがご堪能下さい.
これらの,わかりにくい前書きの部分を図解したのが,冒頭の図です.

要領 (募集の際)

アマチュア局の保証実施者要領について

 昭和三十六年郵政省告示第百九十九号(無線局免許手続規則の規定により、簡易な免許手続を行なうことのできる無線局を定める件)第三項、昭和五十一年郵政省告示第八十七号(電波法施行規則の規定により許可を要しない工事設計の軽微な事項を定める等の件)第一項の表の1の項及び4の項並びに昭和五十八年郵政省告示第五百三十二号(無線設備の設置場所の変更検査を受けることを要しないアマチュア局の無線設備を定める等の件)の規定に基づき、アマチュア局の保証実施者要領を定めたので公示する。

 平成十三年二月五日    総務大臣 片山虎之助 

   アマチュア局の保証実施者要領

 (目的)
第一条 この要領は、昭和三十六年郵政省告示第百九十九号第三項、昭和五十一年郵政省告示第八十七号第一項の表の1の項及び4の項並びに昭和五十八年郵政省告示第五百三十二号の規定に基づき、空中線電力二〇〇ワット以下のアマチュア局に係る電波法(昭和二十五年法律第百三十一号)第三章の技術基準に適合していることの保証(以下「保証」という。)の業務を行おうとする実施者に関することを定めることを目的とする。

 (書類の提出)
第二条 株式会社又は有限会社(以下「会社」という。)は、保証の業務を開始しようとする一箇月前までに次に掲げる事項を記載した書類を総務大臣に提出する。
 (1) 会社名、代表者名及び住所
 (2) 保証の業務を行おうとする事務所の所在地及び電話番号
 (3) 保証の業務を開始しようとする日

2 前項の書類には、次に掲げる書類を添付する。
 (1) 定款及び登記簿の謄本
 (2) 貸借対照表
 (3) 事業収支決算書
 (4) 役員の氏名及び経歴を記載した書類
 (5) アマチュア無線用機器の製造業者及び販売業者、又はこれらの者がその役員の三分の一以上若しくは議決権の三分の一以上を占めるものでないことを証する書類
 (6) 組織に関する事項を記載した書類
 (7) 保証の業務に携わる役員又は従業員が二名以上であって、それらの者が次のいずれにも適合するものであることを証する書類
  [1] 第一級アマチュア無線技士、第一級総合無線通信士又は第二級総合無線通信士のいずれかの資格を有すること
  [2] 二〇〇ワットを超えるアマチュア局を継続して五年以上開局した経験を有すること
  [3] 禁錮以上の刑に処せられ、又は電波法に規定する罪を犯して刑に処せられた者にあっては、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過していること
 (8) 当該会社の役員のうちに、禁錮以上の刑に処せられ、又は電波法に規定する罪を犯して刑に処せられた者にあっては、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過したことを証する書類
 (9) 保証した無線設備を使用するアマチュア局が他の無線局に混信妨害を与えた場合等、保証の業務を遂行する上で当該アマチュア局に対して必要な調査及び指導を行う指導員(第一級アマチュア無線技士、第二級アマチュア無線技士、第一級総合無線通信士、第二級総合無線通信士又は第三級総合無線通信士の資格を有する者であって、現にアマチュア局を開局している者に限る。)を都道府県ごとに二名以上有することを証する書類
 (10) 調査及び指導を行う場合に使用する測定器(電力計、周波数計及びスペクトル分析器)を有していることを証する書類
 (11) 保証の業務を実施するための方法書

 (書類の受付及び公示)
第三条 総務大臣は、前条の規定に掲げる書類が会社から提出された場合は、それを受け付け、次の事項を官報に掲載する。
 (1) 保証の業務を行う会社名、代表者名及び住所
 (2) 保証の業務を行う事務所の所在地及び電話番号
 (3) 保証の業務の開始の日

 (業務の開始)
第四条 前条の規定により公示された会社は、公示された保証の業務の開始の日をもって業務を開始する。

 (変更の通知)
第五条 会社は、第二条の規定に基づき提出した書類の記載内容に変更が生じた場合には、速やかに総務大臣に通知する。

 (業務実施状況の連絡)
第六条 会社は、総務大臣から保証の業務の実施状況について要求があったときは、速やかに連絡する。

 (業務の終了)
第七条 会社は、その業務を終了しようとするときは、少なくとも保証の業務を終了する日の三箇月前までに総務大臣にその旨通知する。
...以下のような点が読み取れます:
・1ヶ月前にさえ言えば,誰が “第二TSS” を立ち上げてもいい.〔2条1項〕
 比較審査などはなく,条件を満たして「受け付け」てさえもらえれば,いい.
・指導員が,都道府県ごとに2名以上,要る/居る. 〔2条2項(9)〕
・TSSは,「この仕事やめる」と3ヶ月前に言えば,いつでもやめられる.〔7条〕

TSSが受け付けられる

アマチュア局の保証実施者について

 昭和三十六年郵政省告示第百九十九号(無線局免許手続規則の規定により、簡易な免許手続を行なうことのできる無線局を定める件)第三項、昭和五十一年郵政省告示第八十七号(電波法施行規則の規定により許可を要しない工事設計の軽微な事項を定める等の件)第一項の表の1の項及び4の項並びに昭和五十八年郵政省告示第五百三十二号(無線設備の設置場所の変更検査を受けることを要しないアマチュア局の無線設備を定める等の件)の規定に基づき、アマチュア局の保証実施者を公示する。

 平成十三年二月二十七日

総務大臣 片山虎之助 

一 保証の業務を行う会社名、代表者名及び住所
  ティエスエス株式会社 木村信次郎
  東京都千代田区神田錦町一-六-三

二 保証の業務を行う事務所の所在地及び電話番号
 東京都文京区千石四-二二-六
 (〇三)五九七六-六四一一

三 保証の業務の開始の日
  平成十三年四月一日



H17年新スプリアス規格――H34年問題――との関連


新スプリアス規格も『JARLそこまで言って委員会』で話にあがりました.

ITU(WRC-03)でスプリアス規格が改められ,日本においてもH17(2005).12.1に追従・施行されました.
『無線設備規則』の改正〔H17省令119〕です:


それ以前* に製造されたリグは――

・H29(2017).12.1~ 開設・それらへの変更は不可 / ただし再免許は可 
・H34(2022).12.1~ 技適などの効力がなくなる

――と扱われます.

    *: 移行期間をみて,H19(2007).11.30以前の製造――とされています.

なお,「技適など」とは,「技術基準適合証明」か「工事設計認証」のこと だと思ってください.
このほかに「技術基準適合自己確認」という制度もありますが,アマチュア機の場合には該当しません.

ところで厳密には上図のとおりで,
当初は,「H17省令119」は,旧スプリアス規格機による開設・変更の手続きを,

  「H19.11.30まで」

と制限していました.
ところがさすがに非難囂々.アマチュアだけに限らず,中古取引もあり.
結果「H19省令99」でその「H17省令119(の附則)」が改正,つまり “無線設備規則の改正の改正” がはかられ,

  「H29.11.30まで」

と延長されました.
つまり,旧スプリアス規格機であっても,H29(2017).11.30までは,開設・変更を手続きできます.
もっとも使用期限のほうは,“改正の改正”をもってしても変更はなく,H34(2022).11.30までです.


『H17省令119 附則』の逐条検証


全6条ありますが,アマチュアに関連する1条・3条1項・3条2項・5条を取り上げます.
(施行期日)
第一条  この省令は、平成十七年十二月一日から施行する。

ただし、第二十四条に次の一項を加える改正規定、第四十九条の九及び第四十九条の十四の改正規定並びに次条の規定は、公布の日から施行する。
→H17(2005).12.1以降は新スプリアス規格に移行です.
→説明の例:
 ◎『無線設備の「スプリアス発射の強度の許容値」の見直し』 (プレゼン資料)
  http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/sanko002.pdf

 ◎『無線機器のスプリアス規格が変わりました。』 (パンフレット)
  http://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/others/spurious/files/newpfrt.pdf
第三条  この省令の施行の際現に免許若しくは予備免許又は登録(以下「免許等」という。)を受けている無線局(符号分割多元接続方式携帯無線通信を行う無線局及び時分割・符号分割多重方式携帯無線通信を行う無線局を除く。以下同じ。)の無線設備の条件については、新規則の規定にかかわらず、平成三十四年十一月三十日までは、なお従前の例によることができる。
→H34(2022).11.30までは,旧スプリアス規格機も使えます.
2  総務大臣は、この省令の施行の日から平成十九年十一月三十日(総務大臣が別に告示する条件に適合する場合については、平成二十九年十一月三十日)までの間に限り、新規則の規定にかかわらず、この省令による改正前の設備規則(以下「旧規則」という。)の条件に適合する無線設備を使用する無線局の免許等又は無線設備の工事設計の変更の許可をすることができる。

この場合において、当該免許等又は許可を受けた無線局の無線設備の条件については、前項の規定を準用する。
→下線部分がH19(2007)年の改正〔H19省令99〕で追記されました.
→別途告示されたものは,H29(2017).11.30までは開設・変更できます.
→「別途告示されたもの」=「H19(2007).11.30までに製造されたもの」です〔H19告示513〕.
→旧スプリアス規格機での「再免許」は,H29(2017).12.1以降も,H34(2022).11.30までであれば,可能です(前項によります).
第五条  この省令の施行前に行われた法第三十八条の二の二第一項に規定する技術基準適合証明若しくは法第三十八条の二十四第一項に規定する工事設計認証(以下この条において「技術基準適合証明等」という。)又は法第三十八条の三十三第二項に規定する技術基準適合自己確認(以下この条において単に「技術基準適合自己確認」という。)により表示が付された無線設備(特定無線設備の技術基準適合証明等に関する規則の一部を改正する省令(平成十七年総務省令第百五十七号)による改正前の証明規則第二条第一項第十一号から第十一号の八までの無線設備を除く。第四項及び第五項において同じ。)については、平成三十四年十二月一日以降は、当該表示が付されていないものとみなす。
→旧スプリアス規格での技適などは,H34(2022).12.1以降は失効します.


さて,どうする?


『JARLそこまで言って委員会』での発言者の意図は以下のどちらにあるのでしょう?
(1) アマチュアに限っては,新スプリアス規格を踏み倒させろ
(2) (新スプリアス規格には従うが,)
  リグを継続使用するにあたっての手続きの救済手段が欲しい

前者(1)を論じ始めるとそりゃあ おおごと ですので,以下では後者(2)の議論に絞ります.
すると,手としては――

(a) (総通の)検査を受けなおす
(b) 自力で技適を通しなおす
(c) TSSから保証を受けなおす

――の三つの策があるのではないでしょうか?
このうち,現実的なのは(c)でしょう.
一方(b)も,前例がないわけではありません.


TSSで保証してもらう


いかんせん,H17(2005).12.1以降にTSSによる保証を受ければ,そのリグは新スプリアス規格として扱われます+ から.
無論,いわゆる 自作機扱い で,「新スプリアス規格を満たしていること」「それをTSSが保証してくれること」が前提となります.

  +: ちょっとだけ厳密には,
   TSSは「法第三章の技術基準に適合していること」を保証しますので,
   その下で定められている(改正後の)『無線設備規則』も当然,満たしていることになります.

【10/6訂正SRI
 TSSに電話して確認しました.
 新スプリアス規格に切り替えられたのはH19(2007).12.1以降.
 すなわち――

 × 省令改正即
 ○ 移行期間の2年間が過ぎたときから
 
 ――でした.
 その後は「旧スプリアス規格で」と申請者から申し出がない限りは,新スプリアス規格の下での保証としているそうです.】


そして,この際の手続きとして,「実体は同じリグなのに,『取替』のような変更をしなくて済むようにしたい」とかが発言の意図なのでしたら,判るような気がします.
しかし,まったく“そのまんま”で済むはずはないと思いますが....


自力で技適を取得


●CB
http://giteki.net/
基本波の整数倍で発生する高調波はLPFで、副次的に発生する電波はBPFで抑制する方向で。
また占有周波数帯幅の基準値は送信部、ドライブ段変調方式、コア調整などにて、クリアーする方向で改良を施しました。
http://giteki.net/ab182/h17giteki6.htm から)
スプリアス低減、調整の要はBPF&LPF同軸ケーブルの取り回し方と送信ライン周波数混合コイルの調整です。
http://giteki.net/ab182/h17giteki15.htm から)
とのことです.
まさに「“そのまんま”で済まなかった」好例です.

●アマチュア
旧スプリアス規格時代の話ですが,技適番号の KA00001001~KA00001010 は
JH1ARY・JA9CZJ・CAL-TECHLab らの猛者によって取得されたものです.

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  • TSSではスプリアスの測定結果は求めないらしい

    Excerpt: ツイート JARDがスプリアス確認保証認定なるものを始めたが、一方、TSSはサイトを見てもその辺りついては何も触れられていない。ひょっとして、保証認定業務から撤退するんじゃないかと思っていたが、そうで.. Weblog: jh4vaj racked: 2016-09-18 11:32